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セカンドライフとリフォームの関係

オレンジの家

私は勤めていた会社のホームページ用に、家をリフォームしたお宅へ取材に伺ったことがあります。それは本来の担当者の代わりに臨時で行くことになったもので、勝手が分からない私は気が重く、渋々と現地へ向かいました。現場では制作会社のスタッフが慣れた様子で取材を進めてくれたので私は雑用係に徹しましたが、その日の経験は私に将来への示唆を与えてくれました。

3組のシニア夫婦のライフスタイルと家

趣味や人との交流を楽しむ夫婦

最初に訪問したのは、仕事を引退したばかりのご夫婦が暮らすお宅。外構や浴室をリフォームした家です。

まず目を引くのは、ガーデニングが趣味だという奥さんが作った、たくさんの花や木に彩られた庭です。前を通る人の中には、興味から足を止めて話しかけてくる人もいるそうです。その庭の横には可愛い輸入車が停まっています。こちらはご主人の趣味で、明るいボディカラーがご主人の人柄を表しているようです。夫婦共通の趣味はランニングで、走った後のバスタイムが楽しみのひとつだと話していました。

このご夫婦は取材にも積極的で、写真撮影の際には「この花の前で撮って。」「車と一緒に撮ってください。」と楽しそうで、明るく社交的な性格が伝わってきました。

お二人の世界が表現されている外構はそれによって人との会話を生み、広々とした浴室はお二人の趣味を一層に充実させ、家が活力の源になっているように感じました。

チューリップ
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外国車
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家族との時間を大切にする夫婦

次に伺ったのは、定年退職から少し時間を経てのんびりと過ごしているご夫婦の家です。バリアフリーや、床暖房や二重サッシといった防寒対策のリフォームを行っています。

通されたリビングで取材を始めると、リフォームをするまでの経緯を丁寧に話してくださり、老後の生活を熟慮されていることとお二人の堅実な性格が伝わってきます。近くに住むお孫さんたちがよく遊びに来るそうで、それが何よりも楽しみとのこと。老後も住みやすい家はおそらく子供たちにとっても孫たちにとっても居心地が良いはずで、家のバリアフリーは世代間のバリアフリーを、暖かい家は温かい家族関係を生んでいるようです。

目立たないリフォームですが、家族と家で過ごす時間を大切にし、穏やかで安心できる暮らしを望んでいるご夫婦はしっかりとセカンドライフを見据えています。皆が集まって、なんとなく長居したくなるような懐の深い家。家が家主ににふさわしく成長したように思えました。

窓と花
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押し出し窓
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物を大事に使いながら暮らす夫婦

最後のお宅は最も年齢の高いご夫婦がお住まいでした。この家では手すりの取り付けや修繕を行ったと聞いていたのですが、それよりも他のことが気になりました。玄関もキッチンも他の部屋もたくさんの生活用品が乱雑に置かれていて、ホームページで紹介するには相応しくないと思ったのです。更に困ったのは予定を伝えていたにもかかわらずご主人は不在で、ひとり家にいた奥さんはなんだか不機嫌そうです。ディレクターとカメラマンと私はなんとか盛り上げようと頑張りました。

徐々に奥さんはいろいろな話をしてくれるようになり、その話を聞きながらカメラマンは部屋の中を撮り続けていました。驚いたのはその写真です。どこにこんな場所があったのだろう?と思うほど綺麗な写真ばかりなのです。それはもちろん撮影の手腕もありますが、写っている物が良いのです。積み重なったお菓子の空箱。古新聞を折って作られた小物入れ。年季の入った座卓と座椅子。私がただの生活用品としか思わなかった物はカメラマンの審美眼によって被写体に選ばれ、それらは私の目にも、なんとも言えない趣のある物として映るようになりました。

写真によって勢いづいた私たちに応えるように、奥さんはどんどん笑顔になっていき、外出していたご主人までタイミング良く帰ってきました。ここぞとばかりにディレクターがご夫婦での撮影をお願いすると、「嫌よ」「横に座るなんて何年ぶりだろう」と言いながらお二人は応じてくれました。窓から日が差す居間で恥ずかしそうに、でもとても嬉しそうに笑う二人の写真は、まるで映画のワンシーンのように印象深く記憶に残っています。

まるで魔法のように“場の空気が変わる”というのを肌で感じた私は、プロの仕事とはこういうものなのかと驚いたのですが、帰り道ではそのプロたちも「いや~最後の家良かったな~。」「最高の写真が撮れたよ!」などと興奮気味に話していました。

このご夫婦がリフォームに頼ったのは最小限のこと。良い家を作っていたのは、空箱や古新聞を再利用し古い家具を大事に使い続ける、飾らない人柄と素朴な生活の営みでした。

ほおずき
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ベンチに座る老夫婦
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リフォームで見える“夫婦”という同志

住宅関係の仕事では、お客さんとは長期的にご家族全員とお付き合いすることになるのですが、多くの家族を見てきた上司が話していたことがあります。血の繋がった家族よりも、夫婦のほうが根本的には似ていると言うのです。親子や兄弟の性格が真逆ということは意外と多く、一方で夫婦は一見異なる意見を持っているようでも、よく話を聞くと価値観や考え方が合致しているそうです。逆に言えば、価値観や考え方が合うからこそ赤の他人が一緒になり何十年も暮らしていけるのだと。

リフォームは家族の将来をより良くするもの。夫婦で意見が割れて喧嘩になることもあるかもしれませんが、目先のことに捕らわれず目指す未来を共有することが大事です。

家と猫
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奥様たちのリフォーム

私が取材に伺った中には、ご主人を亡くされた高齢の奥さんが一人で暮らしているお宅も何軒かありました。リフォーム内容は、キッチンの取り換え、間取りの変更、外壁塗装と様々ですが、共通して印象的だったのは、皆ペットや趣味と共に生き生きと暮らしていたことです。

それに比べて、奥さんに先立たれたご主人が家に手間や費用をかけることは少ない気がします。気力を失ってしまうのか、そもそも家のことをあまり気にしないのか、私の父がそうだったのですが掃除もままならない状態の家も少なくないのではないでしょうか。

一人になった奥さんたちはセカンドライフを楽しむべく家をリフォームしたのか?それとも家をリフォームすることで気持ちを新たにして前向きになれたのか?どちらにしても女性って強い。

花
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花
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年齢とインテリアの関係

私は取材の経験からインテリアの好みも変わり、住んでいる人の世界観や生活感が感じられる部屋をカッコイイと思うようになりました。料理好きの人のキッチンに調理器具や調味料があふれているのを見ると素敵だと思うし、マンガ好きの人の部屋に大量のマンガが並べられているのが綺麗に見えたり。靴好きの人が、靴を買った時の箱に取っ手を付けて棚に並べ、引出しのように使っていたのもとてもカッコよかった。その人にしかできない空間作りというのが、インテリアデザインの醍醐味だと考えるようになりました。

ある時、本屋でインテリアのコーナーを覗いた時のこと。「シンプル」「ミニマム」「ホテルライク」といったワードが並ぶ昨今の書籍のなか、それらとコンセプトを画しているように感じたのは大人向けの本です。50代60代向けの雑誌、セカンドハウスや住み替えをテーマにした本には「私らしい」「マイスタイル」「好きなものに囲まれて・・・」といった言葉が多く使われていました。モデルになっている家はどれも個性的で物が豊富です。家具や装飾品に規則性がなくても調和がとれているのは「#自分らしい」という括りがあるからだと思います。これぞ年の功、上級者といったコーディネートです。

ヴィンテージ製品
イメージ(撮影場所:ナクワチ)
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