猫との生活を書いた著名人の本や、猫が出てくる小説など、猫愛の深さを感じる5冊です。
- フジ子・ヘミング
『パリ・下北沢猫物語』 - 養老孟司
『まる ありがとう』 - 下重暁子
『ロミは鳥になった』 - ロバート・A・ハインライン
『夏への扉』 - フィリップ・K・ディック
『ニックとグリマング』
パリ・下北沢猫物語 フジ子・ヘミング
世界的に有名なピアニストだった故フジ子・ヘミングさんが、生前、猫たちとの生活をたくさんの写真とともに紹介した本です。
聴力を失ってしまったピアニストとしてその波乱の人生がクローズアップされがちですが、彼女のドラマチックなイメージとは裏腹に、猫との暮らしぶりには親近感を覚えます。パリの家も下北沢の家も素敵なのですが、倒されて困るものは紐で括ってあって、椅子からは中綿が飛び出ていて、大事な仕事道具であるピアノでさえ毛だらけだそうです。「猫とピアノが宝物以上のもの」なんだとか。だから「どんなに悲しい時もこの子たちがいるから死ねない」。そうやって逆境をなんとか乗り越えてきたと言います。
ドイツで生活していた頃、ピアノを教えに行っていた家に動物愛護団体から引き取った猫と犬がいた・・・というエピソードが書かれています。おそらく1970年代の話。この時代に動物愛護団体が普通に活動し、市民もそこから猫や犬を引き取っていたとは、なんとも動物愛護先進国のドイツらしい。でも、フジ子・ヘミングさんは書いています。「動物愛護というと大げさに聞こえるけど、少なくとも動物を飼う以上は、最後まで責任を持ってほしい。誰にでもできることでしょう?」と。
下北沢の家には20匹くらいの猫がいて、キャットシッターさんが世話を手伝っていたとのこと。Sさんと紹介されているその方が、我が家の3代目のたまを保護してくれたのです。そして、たまの里親探しをして我が家に縁を繋いでくれたのが、当ブログで紹介している『あったかい家が見つかるまで・・・。』の著者です。
今年(2024年)4月、フジ子・ヘミングさんが亡くなったというニュースは、不意に私を同志が亡くなったような気持ちにさせ、とても悲しかった。
猫好きとしてフジ子・ヘミングさんに親しみを感じる本です。
まる ありがとう 養老孟司
『バカの壁』が大ベストセラーとなった養老先生が、19歳(正確には18歳)で旅立った愛猫まるのことを書いた本です。
養老先生は猫のことをどんなふうに書いているのだろう?それは解剖学者として病気を医学的に分析しているわけでもなければ、生と死というものへの見解を理論的に述べているわけでもない。タイトル通り、まるへの理屈抜きの愛情が伝わってくるものでした。まるが病気になった時はどうしたらいいか悩んで、別れの後もああすれば良かった、こうすれば良かったと後悔して。時間が経っても消えない寂しさだったり、まるがいた時の生活の癖が抜けないとか。まるのことを語る養老先生は、ごく普通の1人の愛猫家でした。
また、まるの病気や死に特有の意味があるように考えてみたり、縁や前世といったものに思いを巡らせたことも書いてあります。なんとなく養老先生のような人はそういった非科学的なことには反論しそうですが、寧ろ批判は“自分が物事を理屈で述べてきた”ことに向けられています。「所詮は理屈の世界のこと」「生きることに対する一種の虐待」とまで書いているのです。
猫が自由気ままに自然体で過ごすあり方を参考にしたい、といったような話を時々見聞きしますが、養老先生も同じようなことを書いています。養老先生にとってまるは、あれこれ理屈で考えることから解放してくれて、それによって均衡を取り戻せるような存在だったのかもしれません。
私は特に『銀河鉄道999』と原作者の松本零士さんの話にほろっときました。ペットを飼っている人なら1度は『虹の橋』の話に触れる機会があると思いますが、『銀河鉄道999』の話も別れたペットたちへの想いがこみあげてきます。「星野鉄郎のセリフにひどく共感した」という養老先生の感想にひどく共感しました。
愛くるしいまるの写真がたくさん載っています。
ロミは鳥になった 下重暁子
作家のを下重暁子さんが愛猫ロミとの出会いから別れまでを書いた本です。発売は1987年。私が初代猫アリスを飼い始めた頃で、中学生だった私は、いつかは必ず訪れる“別れ”なんて想像もしていませんでした。それだけにロミの最期がショックで、忘れられない1冊になりました。
下重さんとロミの別れは突然で、ひどく落ち込んだ下重さんはおそらく自責の念もあり、「ロミは外に憧れていたのでは」と悲観的に考えます。その言葉が私の心に残り、今でも猫が外を眺めている姿を見るとロミの話を思い出すことがあるほどです。私にとって切ない気持ちになる本なのですが、それだけではなく、最後は嬉しいエピソードで締めくくられています。
今回紹介する中で唯一もう手元にない本なのですが、また読みたくなりました。
また、下重さんと先述の養老先生による『老いてはネコに従え』という本も気になります。
夏への扉 ロバート・A・ハインライン
SF好きの夫から薦められて読んだSF小説です。私はまったくSFものに興味がないのですが、表紙の猫の絵と、なにより最初の献辞に期待値が上がりました。
A・P、
フィリス、
ミックとアンネットほか
世のなべての猫好きに
この本を捧げる
内容はコールドスリープ(冷凍睡眠)で未来へタイムトラベルするという話なのですが、その中で想像していたほどには猫の存在感がありませんでした。それでも、だからこそ、「ピート(猫の名)はどこ!?」「ピートは大丈夫?」と常に気にしながら読むこととなりました。
これってまるで日常生活における猫の存在感です。自己主張が強い時もあるけれど、大人しく寝ているとどこにいるのかも分からない。それはそれで気になって家中を探したりして、結局のところ姿が見えない時も振り回されてしまうのです。この話のなかで猫が気になる人は、きっと日常も猫ファーストな人です。
ニックとグリマング フィリップ・K・ディック
大人になってから読んだ児童文学です。
人口が増え食料が不足し、そのため動物は生存自体が許されないこととなった地球。ペットを飼うことも禁止されているのですが、ニックの家では拾った猫を隠れて飼っています。ところがそのホレース(猫の名)が近所の人に見つかってしまい、ニックの家族はホレースを守るために地球を離れて他の星に移住します。
この設定、子供向けの荒唐無稽な話とは思えません。この話が書かれたのは1966年(わけあって初版が発行されたのは1991年)ですが、世界の人口の増加、食料不足、他の惑星での居住など、どれも今実際に議論されていることばかりです。いつか現実に他の惑星で安全に暮らせるようになるのか分かりませんが、ニックの家族が移住した星には危険な生物がたくさんいます。そんな危険も顧みない、このうえなく猫思いな家族の話です。
挿絵の猫がどことなく、子供の頃よく読んだ『モモちゃんとプー』のプーに似ています。このモモちゃんシリーズも好きな本でした。
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