アドミュージアム東京

アドミュージアム東京

汐留にあるアドミュージアム東京へ、2017年のリニューアル後はじめて行ってきました。時代ごとの広告作品と歴史的資料、国内外の優れたCMなど、貴重なコレクションが公開されている日本で唯一の広告関連の博物館です。館内には専門の図書館もあり、貸し出しは行われていないものの自由に閲覧ができます。

アドミュージアム東京

日本の広告の歴史

江戸時代から現代までの特徴的な広告が展示されていて、日本の広告の発展がよくわかります。

庶民が様々な娯楽に興じていた江戸時代、そこには商店の看板、歌舞伎役者が描かれた引札(チラシ)、店や商品が印刷されたすごろくなどが並んでいます。広告すごろくの制作費用を店が補助するなど、現代に通じる仕組みや広告代理業がこの時代に生まれたそうです。

西洋の文化が入ってきた明治時代、広告の絵柄も西洋色が強くなります。印刷技術が進んだことで色彩が鮮やかになっているのが印象的ですが、細かく見ていくと「西洋菓子」という文字や洋服を着た人物が見つかり、生活の変化がうかがえます。このような時代の象徴を探してみるのも楽しい見方です。

アドミュージアム明治時代の広告

経済が発展し都市化が進んだ大正時代から昭和初期、広告も急に洗練された印象を受けます。例えば「ミツワ煉歯磨」の背景の絵柄、今こんなテキスタイルがあってもまさか100年前にデザインされたものだとは思わないでしょう。ひときわ目を引くのが、いつの時代も先鋭的でカッコイイ資生堂の広告。時代に合わせてロゴマークを変更する企業もありますが、資生堂の花をモチーフにしたロゴマークは変わっていないように見えます。

明るいイメージで発展してきた広告ですが、昭和の戦争時代になるとまったく違った様相になります。訴求内容は戦争に関するものに変わり、絵柄や色彩までが重苦しい雰囲気になっています。

アドミュージアム戦時中の広告

敗戦から立ち上がろうとする時代、再び明るい雰囲気の広告が並びます。江戸時代に歌舞伎役者が宣伝の担い手として人気だったように、人々の希望であった映画スターが多く使われるようになったそうです。

1960年代の高度成長期は、広告にも勢いのようなものが感じられます。テレビが一般家庭に普及し人々が憧れのライフスタイルに近づこうとしていた時代、資生堂の「BEAUTY CAKE」など、広告が新しい価値観を提供していたように思います。この頃から広告自体がエンターテイメントとして楽しまれるようになったそうです。

アドミュージアム昭和の広告

1970年代になると高度成長の弊害が出はじめ、1960年代の“新しさ”とは違う趣が感じられます。身近なものを見直すよう、広告が示唆しているように感じます。そしてキャッチコピーが大きな役割を果たしていることが一目瞭然です。JR西日本の「DISCOVER WEST」というキャッチコピーは記憶に新しいですが、元は国鉄時代の「DISCOVER JAPAN」からきているということを知りました。個人的には最も懐かしい時代で、ピンクレディーのレコード、サントリーのペンギンのキャラクターなど思い出深いものが並んでいます。

感覚的で前向きなキャチコピーが多かった1970年代とは打って変わって、問題提起のような文言が主となっているのが1990年代の広告です。経済不況、環境問題の深刻化が背景にあった時代です。

広告にはその時代の世相が反映されています。時代の潮目が変わると広告も変化し、逆に広告が時代をリードしてきた側面もあります。学生時代から日本史に興味を持てなかった私が、広告を通すと日本の移り変わりを知りたくなるのが自分でも驚きです。私の前で小学校低学年くらいの子供が真剣に説明文を読んでいたのですが、絵や写真が好きな子が広告作品から日本の歴史に興味を持つということもあるかもしれません。

CM(コマーシャル)

私がアドミュージアム東京で最も見たかったのはCM(コマーシャル)です。テレビでなんとなく見ているだけのCMですが、なかには惹きつけられたり感動するものもあり、下手なドラマや映画よりCMのほうが面白いと思っていた時期さえありました。そんなCMを視聴できるのが「4つのきもち」と題されたコーナーと、館内中央に置かれた大きなモニターです。

世界の選りすぐりのCMが視聴できる「4つのきもち」

アドミュージアム東京

天井から吊るされた白いオブジェが「4つのきもち」を味わえる視聴ブースです。写真左からそれぞれ「元気がでる広告」「心あたたまる広告」「考えさせられる広告」「びっくりする広告」というテーマに分かれていて、中に設置されたモニターでCMが数点ずつ放映されています。

アドミュージアム東京

初めて見るCMも見たことのあるCMも、さすが選ばれたものだけあって秀逸な作品ばかりで、今回最も心を動かされました。例えば、広告協議会Ad Councilの『愛にレッテルはいらない』(アメリカ)は本当に心があたたかくなり、赤十字国際委員会の『HOPE』(スペイン)は考えさせられるものでした。夫は、資生堂の『High School Girl?』(日本)に驚いて、テレビ局チャンネル4の『We’re The Superhumans』(イギリス)に感動したようです。

気になるCMを選んで視聴できる大型モニター

アドミュージアム東京

モニターにはたくさんのCMのキャプチャが映し出されています。タッチパネルになっているので気になるものを選んで再生したり、年表を開いてそこから検索したりと、自分の見たい作品を楽しめます。ここでもアラフィフ夫婦は夢中になって遊んでしまいました。好きだったCMをあれもこれもと見たくなるコーナーなのです。

アナログテーブル

モニターと並んでアナログ作品のテーブルも置かれています。パネルを開いていくと、江戸時代の引札や錦絵、お菓子のパーッケージなどがファイルされています。面白いのはCMの絵コンテまであること。作品だけでなく制作の絵コンテを見られるのは貴重です。

リニューアルしたアドミュージアム東京の感想

アドミュージアム東京

リニューアル前より見やすく、面白くなっていました。以前は狭いスペースにところせましと展示されていて、広告の歴史もわかりづらかったように記憶しています。リニューアルした館内は広々としていて解放感があり、全体的に白を基調としていてスタイリッシュになっています。そのなかで「4つのきもち」をテーマにしたオブジェが存在感を放っていて、それ自体がアートです。壁面に投影されている広告コピーもなんだかカッコイイ。

アドミュージアム東京
壁面に広告コピーが順番に映し出されています

広告史の展示は見やすく説明はわかりやすく、好奇心をかきたてられました。今回図書館は利用しませんでしたが気づいたら2時間、思う存分に楽しんでいました。加えて嬉しいのは、一部を除いてほとんどの展示物が写真撮影できるということ。博物館で写真を撮れるというのは珍しいのではないでしょうか。自由に撮影できて使用できる(非営利目的に限る)ということ自体が、なにか広告の在り方を表現しているように思えるし、時代に即していると思います。

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