憧れだったデジタル腕時計の復権

CITIZENデジタル腕時計

子供の頃、憧れたもののひとつが腕時計でした。「大人になったら買ってもらえる」と信じて待ち続けた腕時計は、中学校入学の時にようやくプレゼントしてもらえることとなりました。母と出かけた店で私が選んだのは、CITIZENのデジタル腕時計です。ステンレスの銀色の腕時計が多い中、ブラックのケースとベルトに惹かれました。当時はアナログ式が主流だったので「普通の針式の時計にしなさい!」と母に言われたのですが、どうしてもデジタル式が欲しくて、なんとか説得して買ってもらったのを覚えています。

デジタル腕時計の移り変わり

デジタル腕時計は現在のパソコンやスマホに通じる電子技術が基になっていて、それを一般の人が使えるようにした最初の製品でした。

1973年、世界で初めての時・分・秒の6桁で表示する腕時計、SEIKOの06LCが2タイプのデザインで発売されました。クォーツが特別に調整され、最新の液晶技術が使われ、ケースの面によって異なった研磨方法が施されています。当時の価格が14万5000円。SEIKOの技術を注ぎ込んだ高級品でした。

この液晶技術はその後、EPSONのプロジェクター事業に発展します。スマホの画面もこの頃の技術が基になっています。

1980年代に入ると機械式の腕時計が復権し、スイス製などの高級品が人気を集めました。デジタル腕時計は価格が急激に下がり“安モノ”という印象になってしまいます。価格が下がったのは技術者と企業による努力の賜物ですが、皮肉な結果になりました。

そして1990年代には携帯電話、2000年代にはスマホやスマートウォッチが登場し、時刻は時計でなくても知ることができるようになりました。

基本的な機能だけを考えれば、デジタル式に限らず全ての腕時計が衰退しても不思議ではありません。しかし実際には人気が復活している腕時計もあります。海外メーカーの機械式腕時計は、熟練工によって作り上げられる精密機械としての希少性、伝統を踏まえながらも新しく更新されるデザインなどが人気の理由です。クォーツ式のデジタル腕時計もまた、高機能で優れたデザインのカシオのG-SHOCKなどが広い世代から人気を集めています。そこには実用性以外の付加価値があります。

変わらない付加価値

中学校入学の時に憧れの腕時計を手に入れた私は、それを学校にも着けて行きました。ところが、ある日の掃除の時間、棚の上に置いてちょっと目を離した間に失くなってしまったのです。だいぶ探し回ったのですが見つからず意気消沈しました。買ってもらってからわずか2ヶ月後のことでした。

それから30年後、当時のデジタル腕時計に興味がわき、ネットオークションでSEIKOの06LCなどを入手しました。そしてついに中学校で失くしたものと同じモデルも見つけます。驚くことにそれは新品でした。この時ばかりは「これは神様が・・・」などと考え、同時に指は入札ボタンをクリックしていました。

大人になってから見てもけっこうカッコイイと思ったりします。G-SHOCKなどもそうですが、デジタルにはブラックのケースがよく合います。可愛らしいアイコンはアラームやタイマー、ストップウォッチなどの機能を示しています。

当時のデジタル腕時計は多彩な機能を搭載したものが多く、デジタルとアナログの両方で時刻を表示したり、電卓や電話帳の機能がついているものもありました。新しい技術を使って「あれもできないか、これもできないか」と、技術者が楽しみながら作っていた様子が想像できます。これらの機能が実際に役立ったという記憶はありませんが、私は何度も操作してみたり、友人に見せては自慢していました。

こういった見た目のカッコよさと機能の多さが私にとって“憧れ”の要素になっていたことは間違いありません。そしてそれを手に入れた時の喜びや満足感は、大人になっても変わらないものでした。

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