ノスタルジックなラジオ

レトロなシャープ真空管ラジオ

ラジオ受信機のデザイン

プロダクトデザイン好きの私がコレクションしているもののひとつがラジオです。テレビは観るものなので映像を邪魔しないデザインになっていますが、ラジオはデザインが自由で、私にとってはテレビと同じく観て楽しいものです。

私が持っているのは、100年という長い歴史のなかでも1955年~1967年の間に発売されたものばかりです。電化製品が家庭に普及し、ライフスタイルが移り変わった時代。ラジオもその時々の最新技術と流行のデザインをまとい、バラエティに富んでいます。現代も日々新しい技術やサービスが登場し、世界が目まぐるしく変化する時代です。しかし、もしかすると60年前の変化の方が大きく、それをポジティブに受け入れて製品開発に反映させていたのかもしれません。

上の写真は1955年~1960年頃に製造されたシャープの5P-100型です。昭和30年代の前半、高度成長期が始まった頃のもので、時代の明るさや希望、科学技術に対する期待が込められたようなデザインです。プラスチック製品がまだ新鮮だった時代。形を自由に加工できることが嬉しい、そんなデザイナーの気持ちが伝わってきます。このような複雑な形状は、今ではとても採算が合わず製品化できないのではないでしょうか。メーター部を点灯させると、当時の人々が抱いた未来への思いが分かるような気がします。

BRAUN真空管ラジオ

こちらは、1960年頃にドイツのBRAUN社から発売されたRT-20です。シャープのラジオと同じ頃の製品になりますが、日本製とドイツ製では大きく印象が異なります。前面は白一色の金属製プレートで覆われていて装飾はなく、ツマミやメーター部分もシンプルで現代的です。デザインしたディーター・ラムスは自らのデザインアプローチを「Less but better(より少なく、しかしより良く)」と語りました。ディーター・ラムスのデザインはApple社の製品に影響を与えていると言われています。まさに簡素で機能的、現代のリビングに置かれていても違和感はありません。

シャープトランジスタラジオSONOPAC

1963年頃にシャープから発売されたSONOPACです。前述の2台は真空管方式ですが、こちらはトランジスタラジオです。真空管ラジオは大きくて重く据え置き型が中心でしたが、トランジスタになって格段に小さくなり持ち運べるようになりました。SONOPACも持ち手が付いています。そして驚くことにレコードをかけることができるのです。コンパクトでポップなカラーリング。当時の人々が屋外で音楽を楽しむ光景が目に浮かび、それは1960年代のアメリカのライフスタイルにぴったりです。おそらくアメリカに多く輸出されたのではないでしょうか。

PHILIPS時計付ラジオ

1967年にPHILIPS社から発売された時計付きのラジオです。ラジオに限らず、2つの機能を合わせた製品はたいていどちらの機能も中途半端で、デザインが冴えないという印象があります。しかしこのラジオのデザインは未来的で、シャープでありながらどこか柔らかさもあります。特徴的なのはスピーカーが上方を向いていることです。人に向かって音を出すのではなく、置かれている空間全体に音をポーンと放り出す。そこにいる人は音を感じつつ朝の身支度や仕事をし、たまに時間を確認する。そんなラジオの在り方を考えたのかもしれません。

手放してしまった2台も改めて観ると魅力的です。

インターネットの時代に思うラジオの良さ

これらの古いラジオ、今でも普通に聴くことができます。100年前と同じ原理で送り出された電波を60年前のラジオで受信し、スピーカーから流れてくるのは「AI(人工知能)がチェスの世界チャンピオンに勝利した」というニュースだったりします。100年という時間のなかで“変わるもの”と“変わらないも”を思いながらぼんやりしていると、次に聴こえてきたのは「雪が~溶けて川に~なって流れてゆきます~」という明るいフレーズ。「AIに奪われる仕事は・・・」という話を聞き逃してしまいましたが、いつも聞き流していた40年前のヒット曲が懐かしく、思わず耳を傾けました。ラジオの良さとはまさに“ぼんやりと聞ける音源”であることと”たまたま耳にする面白さ”だと思います。

現在主流のメディアは便利です。すべてオンデマンドなので自分の要求に応えてくれます。インターネットで検索すれば答えが見つかるし、SNSでは気の合う仲間も見つけられます。テレビの場合も番組にリアルタイムで参加できたり、視聴者の希望に合わせてストーリーが変わっていくドラマもあります。積極的に関与することで面白くなったり有益となり、自分に都合のいいものや興味のあるものを選べます。

インターネットやテレビの便利さがないのがラジオなのですが、逆にそこがラジオの良さなのです。ラジオは、仕事、食事、散髪、車の運転、考え事・・・他の作業に集中しながらなんとなく聞くことができます。自分で探したり、dボタンで参加したり、もちろん「いいね!」やコメントをする必要がなく、リアルとバーチャルが入れ替わってしまうようなこともありません。流れてくるものを受容するという関わり方だからこそ世界が広がるし、今この時代だからこそ欲しくなるシンプルでリラックスできるメディアです。ラジオは衰退していると言われて久しくなりますが、今でも熱心なファンがいるのは確かです。

レトロなラジオ

40年前のヒット曲を聴いて学生時代のことを思い出しました。睡魔とたたかいながら深夜放送を聴いたり、FMラジオで好きなアーティストの曲をエアチェックしたり。青春時代が昭和だった私には、ラジオの思い出がたくさんあります。まさしくカーペンターズの『イエスタデイ・ワンス・モア』、そしてクイーンの『RADIO GA GA』の心境です。

「イエスタデイ・ワンス・モア」
(歌詞の一部)
若かった頃、好きな曲を待ちながらラジオを聴いていた
その曲がかかると一緒に歌い、笑顔になれた・・・
「RADIO GA GA」
(歌詞の一部)
10代の頃の夜中、唯一の友達だった
知るべきことはすべてラジオで聴いた・・・
君(ラジオ)の時代があった、君は力を持っていた・・・
ラジオ、皆まだ君を愛している・・・
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