知識がなくても楽しめる建物の鑑賞

黄色い建物

今年注目された建築物

2019年、令和元年は日本の建築物に世界の注目が集まる出来事がありました。

天皇の皇位継承に際して行われた大嘗祭は国外の関心も高く、その舞台となった大嘗宮にも話題は及びました。大嘗祭のために宮大工によって建てられる壮大な建物は、2日間の儀式が終わったらすぐに解体されるというのです。解体されるまでの一般公開の期間には78万人もの人が訪れたそうです。

また、悲しくも不意にその姿を消してしまったのが沖縄の首里城です。沖縄の象徴であり、世界文化遺産に登録され国外からの観光客も多かった首里城。歴史的な建築物が一晩で焼失してしまったことは、木造建築を残していくことの難しさを知る出来事でもありました。

大嘗宮や首里城のことは刹那的な話ですが、年末には日本に永く残っていくであろう建築物にも注目が集まりました。2020年のオリンピックに向けて建替工事が行われた国立競技場です。こちらも紆余曲折ありましたが、世界で活躍する建築家の隈研吾氏が設計した作品が無事に完成し、こけら落としが催されました。

一方世界に目を向けると、1919年ドイツに開校された造形学校バウハウスが創設100周年ということで、世界各国で様々なイベントが開催されています。芸術と技術の統合を目指したバウハウスの教育はとても革命的で、守旧派や右翼から常に弾圧を受け、最後はナチスからの迫害によってわずか14年間で閉校してしまいます。しかし揺るぎない理想を持った教師と生徒たちの活動は世界に広がり、現代の建築やデザインに決定的な影響を与えています。世界文化遺産となっているデッサウ校舎はバウハウスの象徴的な存在で、今年は特に多くの人が見学に訪れています。

バウハウス100周年

初心者が建築を楽しむ方法

無事に完成した国立競技場ですが、最初はイラク出身の建築家ザハ・ハディドの設計案が採択されていました。その工費や景観は議論を呼び、それまで建築に興味のなかった人の中にも少なからず関心を寄せた人がいたのではないでしょうか。私もその1人で、元より建築物を鑑賞したり写真に撮ったりすることが好きだった夫と一緒に、2014年東京オペラシティで開かれたザハ・ハディドの展覧会を見に行きました。斬新で曲線が印象的な作品の数々は、専門知識のない私にとっては反論する余地のないカッコイイものでした。これを機に、私も旅行先などで建築物の写真を撮ることが増えました。

好きな人は優れた建築物を鑑賞することを目的に出かけるのだと思いますが、私は旅行先で目に留まった建築物を眺めるといった感じです。初心者はそれだけでも新しい発見があり、知識がなくても楽しむことができます。国ごとの特色や時代による特徴などに気づくと、建築物がその土地の風土や文化をとてもよく表していることが分かります。その土地の予備知識を持って旅をすることは多いですが、逆に建築物からその背景を考えることもできるのです。その土地の歴史や宗教、人々の思想までも想像させられます。

伝統建築

伝統建築の教会

伝統的な建築物には重厚感があります。特に宗教的な意味合いの強い建築物は装飾が凝っているものが多く、決して合理的ではないところにそこで暮らした人たちの信仰心が表れているように思います。

バリ島の伝統建築
バリ島の建築物に施された彫刻
バリ島の伝統建築
バリ島の建築物に施された彫刻

私が好きなバリ島ではとても繊細な彫刻が施されているものが多く、手先が器用なバリ人ならではの芸術性を知ることができます。人物や神鳥のガルーダが彫られているのは、バリ島に数多く残された神話を表現しているのかもしれません。建物以外の建造物にも信心深いバリ人らしさが表れています。近年は渋滞を解消するために立体交差路などが作られているようですが、長い間バリ島では立体的な道路が作られなかったそうなのです。それは「人の頭の上を人が通ったりしてはいけない」という考えの元だったそうです。

佐原の伝統建築

その国らしさがより表れる伝統建築ですが、日本では重要伝統的建造物群保存地区が43道府県にあるので、建物鑑賞の初心者でも身近なところで見ることができます。

近代建築

コペンハーゲンのオペラハウス

人々の想いが込められているであろう装飾は、近代的な建築物からはなくなっています。その分すっきりとしていて明るい印象を受けるものが多く、中に入っても採光を重要視していることが分かります。

ハワイ州庁舎
ハワイ州庁舎の吹き抜け部

すっきりと明るく近代的でありながら、その土地への思いが込められているという点で面白いのがハワイ州庁舎です。例えば建物中央の吹き抜け部は、上部の形が火山の火口を、青い壁と白い柱は海と船主を表現しています。

日本でも美術館や図書館などに有名な建築家による近代建築を見ることができるので、初心者もその魅力に触れやすいと言えます。

写真撮影

いろいろな場所で目を引く建築物に出会えるのですが、なかなか増えていかないのが納得のいく写真です。どうもつまらない写真になってしまうことが多く、他の目的もある旅行では途中でタイムオーバーとなることが少なくありません。そのため建築物を忠実に写すことにこだわらず、いろいろなアングルで撮るようにしています。部分的にクローズアップして撮ったり、風景の中にさりげなく建物を据える構図にしたり、行き交う人を入れてみたり。そうすることでなんとなくアートな雰囲気になるので、まったく気に入らない写真というのは減ります。

向きを変えることができない建築物の写真は、撮る時間と場所、天候が出来栄えに大きく影響します。時には行き当たりばったりの建物鑑賞ではなく、建物鑑賞と写真撮影を目的とした旅行に出かけるのもいいかもしれません。

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