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ダイアログ・イン・ザ・ダーク

ダイアログ・イン・ザ・ダーク

ダイアログ・イン・ザ・ダークは、光のない暗闇の中で参加者同士が協力しながら、日常的なことを視覚以外の感覚で体験することができるイベント施設です。日本では東京と大阪に会場があります。これまでに参加した人数は世界41ヶ国で800万人以上、日本では22万人。暗闇の中は期間ごとにテーマが設定されています。

2014年の夏、「僕たちの夏休み」というテーマに私たち夫婦は参加しました。

真暗闇の「僕たちの夏休み」体験

その時間の参加者は7人。案内をしてくれるアテンドは視覚障害者です。参加者は視覚障害者用の白い杖を持ち、それを使う練習をしてからいよいよ暗闇に入ります。

普段の生活で完全に光を遮断されるということはほぼありません。どんなに暗い夜道でも自動販売機の明かりが見えたり、月や星の光がぼんやりとあったりします。完全な暗闇ということ自体が初めての経験です。

参加者7人が1列になり、テーマである “おじいちゃんの家へ行く” ためにおそるおそる前に進み、「ここから橋です。」などと声をかけ合います。先頭の人が後ろの人へ、その人がまた後ろの人へ、他の人の安全に気を配ります。

自分たちの声かけ以外の音にも敏感になります。川のせせらぎや蝉の声、線香花火の微かなチリチリという音。そういった聴覚からの情報で風情を感じます。

聴覚以外では手で触れる感触が大事な情報源になります。おじいちゃんの家の縁側、その奥にある畳の部屋、部屋の広さや置かれているものなど、すべて手で知っていきます。

身の回りは静止しているものばかりではありません。庭にはブランコがあります。見えない状況で近くに動いている物があるというのは怖いものですが、ひとたび腰掛けてブランコをこぐとスリルがあって楽しかったです。

おじいちゃんの家をあとにしたら休憩場所でおやつタイムです。今度は暗闇での味覚の体験です。アテンドがメニューを言ってくれるのですが、集中しないと聞き漏らしてしまいそうでした。私が注文したのはお茶と水ようかんです。スプーンでようかんをすくって口へ運ぶことなど、見えなくても簡単にできると思っていたのは大間違いでした。ようかんがスプーンに乗ったのかさえ分からず、落とさないように口の周りを汚さないように、想像以上に気を使いました。

最後は少しだけ光がある部屋に移動し、そこで絵を描きます。ぼんやりと手元が見えるだけの状況ではクレヨンの色を選ぶのも難しく、ハガキサイズの紙に絵と文字を書くだけのことに苦戦しました。後から見るとまるで絵も文字も覚えたてのような拙さです。

真暗闇の中おじいちゃんの家へ行く体験は、懐かしくて新しくて感慨深いものでした。

頼りのアテンド

視覚障害者であるアテンドの行動で、特に驚いたのは休憩場所での会計のスムーズさです。代金を渡すとすぐにお釣りを返してくれたのですが、そのテンポはまるでお金を目で確認しているような早さです。硬貨なら慣れれば手で識別できるようになるのも分かる気がしますが、紙幣をどのように識別しているのか不思議でした。

聞くと、携帯している定規で大きさを測っているとのこと。調べてみると、紙幣の額面が大きくなるごとにサイズも横幅が4mmずつ長くなっているのですが、遅れて発行された二千円札に関しては千円札と五千円札との差がそれぞれ2mmしかありません。このわずかな差を瞬時に正確に測り、なおかつお釣りの計算もしているのです。

会計の時以外にもアテンドを頼るしかない場面が何度もありました。

おじいちゃんの家で靴を脱いで部屋の中を歩いた後には、広い縁側のどの辺りに靴があるのか見当もつかず、探し当てたとしてもそれが自分の靴かどうか分かりません。アテンドが参加者の名前を順番に呼びその人の靴を足元に用意してくれたのですが、そうしてもらわなければ7人は混乱していたに違いありません。

アテンドは最初に行った自己紹介で参加者全員の名前を覚えたうえ、どの場面でも全員を安全にスムーズに誘導してくれました。

普段より無力になる状況で参加者同士が協力し、アテンドを頼り、視覚以外の感覚に集中するという体験は、組織の中で必要な様々なことを学ぶのにも効果的です。そのため法人向けのワークショップも充実していて、多くの企業が研修などで利用しているそうです。

一般向けの「僕たちの夏休み」に参加した私たち夫婦も、有意義な経験をすることができました。

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