昔ながらの団地が見直されている今、我が家もついに団地リノベーションに挑戦し、居心地の良い家ができました。お世話になったのは無印良品を展開する良品計画のグループ企業、MUJI HOUSE。そのMUJI HOUSEが手掛けるリノベーションサービスがMUJI INFILL 0です。特に無印良品ファンだったわけではないのですが、結果的には大満足の住み替えができました。
MUJI INFILL 0での家づくり
普通ならリフォーム業者を決定するために複数社を比較し相見積をとりますが、今回はネットで調べただけでMUJI INFILL 0に決めてしまいました。決めたのは夫で、その理由は「調べた中で1番カッコよかったから」。なんとも感覚的な理由ですが、その直感に従うことにしました。MUJI INFILL 0は他社のリフォームと違い、コンセプトがはっきりしているため家づくりの大枠は決まっています。例えば以下のような点で、限定的であったり基準が設けられています。
◆施工地域 施工は一都三県の一部地域に限られています。都市部にあふれた中古住宅をリノベーションすることで望み通りの家を手に入れやすくする、ということを謳っているのです。特にここ数年、地方移住が注目されていますが実際の移住者はわずかで、都市部に住む多くの人は生活圏を変えられないというのが現実のようです。私たち夫婦も地方移住に憧れていますが、ほぼテレワークの今でも会社から遠く離れることはできません。住む場所にこだわれば物件価格が高くなるので何かしら妥協点がでてきますが、すべてが叶いやすいという点でMUJI INFILL 0のコンセプトは理にかなっています。
◆物件と不動産会社 築年数の古い団地は安価ですが、新耐震基準を満たしていることが施工条件となっています。また、MUJI INFILL 0では物件探しも行ってくれますが、その場合は提携している不動産会社に依頼することになります。今回我が家を担当してくれた方は、MUJI INFILL 0のコンセプトと私たちの希望に沿った最適な物件を探してくれました。そして、家を買い替える時の施主の不安をよく理解してアドバイスをくれるので、販売活動を始めてすぐに納得の価格で家を売ることができました。
◆スケルトンからのリノベーション 部分的な改装・改修ではなく、内部をすべて解体してから作り直すリノベーションに限られています。設備、内装壁、床などすべて解体し、見えない部分から確認して設計をします。設計には省エネ化も含まれていて、断熱材と複層ガラスのインナーサッシを標準で施工してくれるのが助かるところ。事前に専門の機関が温熱性能の計算をしてくれるので、その信頼は高まります。また、間取りを自由に変えられるので、キッチンを広くしたり、2つだった部屋を1つにしたり、新たに納戸を設けたり、私たちの生活スタイルに合わせてリデザインできました。
◆ミニマルな内装と設備 内装と設備の選択肢は限られています。白い塗装の壁とフローリング。土間仕上の玄関。シンプルな設備や建具。おのずと無印良品っぽいミニマルでナチュラルな仕上りになります。部屋の仕切りは家具や引き戸でゾーニングし、収納も家具や可動棚を設置するのみ。これは間取りを変えたくなったら簡単に変えられるということです。私はシンプルすぎるインテリアは好みではないのですが、箱がシンプルなほうが自分好みにいくらでも色付けできると思いなおし、それがMUJI INFILL 0に決める理由となりました。
団地の良いとこ悪いとこ
前提として、団地とマンションの違いははっきりした定義はないようですが、高度経済成長期に並べて建てられた集合住宅のことを団地と言っているのだと思います。その団地が今見直されている理由はなんなのか?おそらく多くの人にとって魅力的な点は、敷地が広いことと物件価格の安さだと思います。土地に余裕があった時代に建てられているので敷地にゆとりがあり、立地も好条件だったりします。もちろんマンションと比べて不便なこともあるのですが、実際に住み始めてから思ったことは、良いとこ悪いとこは表裏一体で、考え方次第だったりします。
マンションと比較した 団地の特徴 | 良い考え方 | 悪い考え方 |
敷地が広い | 棟と棟が離れていて南向きに建てられて いることが多く、陽当たりや風通しが良い | ゴミ出し場や駐車場が遠い場合がある |
エレベーターがない | 運動になる | 体力を使う |
宅配ボックスがない | 置き配に困る、または再配達になる | |
セキュリティ設備がない | 自分自身の防犯意識のほうが大切 | 不安 |
平置駐車場 | 入出庫が早い | 屋外で雨風にさらされる |
外観や共用部分が古い | レトロ感がおしゃれ | ただ単に古い |
天井が低い | 冷暖房が効きやすい | 狭く感じる |
物件価格が安い | リノベーションなどに費用をかけられる | |
コミュニティが確立している | 組合の行事などが充実している | 参加が義務的な活動がある |
私たちにとって魅力的だったのは、なんと言っても窓からの景観が広く解放感があることでした。私がやりたかったのは、外からの視線を気にせず窓を開け放して過ごすこと。今それができるようになり、秋には外から金木犀の香りが漂ってきます。
最も気がかりだったことはエレベーターがないことで、重い荷物を運ぶために階段でも使える3輪カートを購入しました。決して大荷物を運ぶのが楽になったとは言えませんが、それでもこの3輪カートは大いに役立ったし、普段の昇り降りはすぐに慣れました。
外観の古さは否めません。それがレトロな魅力となっている団地もありますが、我が家は残念ながらそういった感じはありません。ただ気に入っているのはベランダの手すりです。マンションはベランダが塀やパネルで囲われていることが多いですが、団地は手すりが多いように思います。それがより解放感を生んでいて、例えば室内で寝転んでいても景色が望めます。
今回の住み替えにかかった費用(住宅購入+リノベーション)は、その前に住んでいたマンションの費用(住宅購入+リフォーム)とほぼ同額です。しかしその内訳はまったく違っていて、今回は物件が安かった分より多くの費用をリノベーションにかけることができました。そのため、総額は同じでもはるかに今の家のほうが快適で自分たちらしく、夫も私も今まで住んだ家の中で最も気に入っています。
この家を買う時、前の家主さんが「あの家の1番の自慢は近所の人たちがいい人ばかりなとこです。」と言っていました。なんて素敵な言葉! 事実、お隣さんは明るくて親切だし、他のご近所さんも気さくな方ばかりです。ペットを飼っているお家が多いので、会うと「猫ちゃんは元気?」などと声をかけてくれます。ちなみに昔は団地というと、ペットNG、単身者NG、となっていましたが、現在はOKとなっているところが多いようで、それが幅広い層から選ばれて人気が復活している一因でしょう。

近所の昭和喫茶
引越しの前から近所にある小さな家が気になっていました。なにか商いをやっているようなので調べると、喫茶店であることが分かりました。庭ではたくさんの野菜が育っていて、部屋の中は店主の趣味であろう装飾と、ひとつずつ集めたような様々なカップが並んでいます。食事も美味しいのですがノスタルジックなその空間が気に入り、私たち夫婦は「昭和喫茶」と呼んで足を運んでいます。また少し行ったところには昔ながらの商店街があり、その中の居酒屋も行きつけになりました。そんな素朴な店が近所にあるのも団地の良いところです。